【政治の形・その2】ギリシャ時代の政治と現代の政治では、そもそも政治という概念がどれくらい異なるものなのですか

質問ギリシャ時代の政治と現代の政治では、そもそも政治という概念がどれくらい異なるものなのですか 解答非常に本質的で鋭い質問です。「政治(politics)」という言葉自体が、ギリシャ語の “polis(ポリス)”=都市国家 に由来していることからもわかるように、古代ギリシャと現代とでは「政治」という言葉が担う世界観そのものが大きく異なります。ただし、「人間が共同体の中でどう生きるか」という根本の関心は共通しています。以下で、政治概念の違いを3つの観点から整理します。① 「政治の目的」の違いギリシャ時代(特にアリストテレス)政治の目的は「善き生(エウダイモニア)」を実現すること。国家(ポリス)は、人間が「よく生きる」ための共同体であり、政治は倫理の延長でした。したがって、政治家=徳(アレテー)を備えた市民が行うべき行為で、道徳と政治は一体のものだった。現代政治の目的は「善」よりも秩序と自由の共存、すなわち利害調整や権力の管理が中心。国家は「よく生きる場」というより、「衝突を抑え、個人の自由を守る装置」。政治は倫理から分離され、制度・法・権力の技術として扱われる。→まとめると、ギリシャの政治=「共同善の追求」現代の政治=「多様な個人の調整」② 「政治に関わる主体」の違いギリシャ時代政治に関わるのは「自由な成人男性市民」のみ。奴隷・女性・外国人は政治共同体の外に置かれた。政治とは、少数の自由人による直接的な公共の討議だった。現代ほぼ全ての成人に参政権があり、代表制・間接民主制が基本。さらに、政…

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【政治の形・その1】人類史上最少の政治体系

質問人類史上最少の政治体系は、どのようなものですか 解答とても深い問いです。「人類史上“最少”の政治体系」とは、つまり 政治が最も単純な形で存在していた社会、すなわち “権力の分化や制度化がほとんど起きていない段階の政治” を指すと考えられます。以下では、進化人類学・政治哲学・社会学の視点を組み合わせて、人類史上最少の政治体系を説明します。① 定義:政治の“最少形態”とは何か政治とは本来、「人と人の間で決定を行うための力とルールの構造」ですが、「最少の政治体系」となると、それがまだ制度化されていない状態を意味します。つまり、王も国家もない法律も官僚もないしかし、人々が共同で意思決定し、争いを避ける仕組みはあるこうした社会を、人類学では 「首長なき社会(acephalous society)」 と呼びます。② 代表例:狩猟採集社会の政治構造たとえば、アフリカ南部の「サン人(ブッシュマン)」や、アマゾン奥地の先住民社会など。彼らの社会では、次のような特徴がありました。項目内容権力の形態恒常的な支配者なし。個人のカリスマ性(狩りの技術・知恵・寛容さ)によって一時的に指導する者が現れる。意思決定集会で全員が発言し、**合意形成(コンセンサス)**で決定。罰や法形式的な刑罰なし。非難、からかい、隔離など社会的圧力による調整。財産・階級財産の蓄積が少なく、平等主義的。富の独占が抑えられる。暴力・戦争小規模な紛争はあっても、持続的な戦争体制はない。このような社会は、政治がまだ「制度」ではなく「人間関係…

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