質問
ハイデッガーの存在と時間について解説してください。 |
解答
ハイデッガーの『存在と時間(Sein und Zeit)』は、20世紀の哲学に大きな影響を与えた画期的な著作であり、彼の時間論は従来の哲学とは全く異なる方向から「時間とは何か」「存在とは何か」を問い直します。 以下にその要点をわかりやすく整理して解説します。 ■ 基本的な視点:なぜ「存在と時間」なのか? ハイデッガーは、「存在とは何か?」という問いを現代哲学の中心課題と考えます。 しかし、彼は次のように問い直します: > 「存在を理解するとはどういうことか? それは時間的である」 つまり、存在を問うためには、時間という構造を解明する必要がある、というのがこの本の出発点です。 ■ ハイデッガーの核心概念:「現存在(Dasein)」 * **Dasein(ダーザイン)**とは、「人間存在」を指しますが、単なる人間のことではありません。 * 世界の中に生きている「意味を問う存在」としての人間です。 * 現存在は、世界を理解し、意味づけし、「存在そのものを問うことができる唯一の存在」とされます。 ■ 現存在の時間性(Temporalität) ハイデッガーにとって時間とは、時計的な「連続する時間(線的時間)」ではなく、存在の仕方そのものに関わる根本的な構造です。 ● 現存在は時間的に構成されている: 以下の三つの契機(時相)で成り立ちます: 1. 未来(Zukunft): 現存在は常に「自分が何になるか」に向かって投げ出されている(自己の可能性を先取りする)。 →「投企(Entwurf)」 2. 過去(Gewesenheit): 現存在は自分の歴史や背景を背負っている。 →「被投性(Geworfenheit)」 3. 現在(Gegenwart): 現存在は今、世界の中でさまざまなものと関わりながら生きている。 →「頽落(Verfallen)」や「配慮(Sorge)」 この三つは、単なる時間的順序ではなく、存在の構造として常に絡み合っているものです。 ■ 「本来的時間」と「非本来的時間」 * 非本来的時間: 私たちが日常生活で感じる「今が流れていく時間」や、時計やカレンダーで測る時間。 →これは「存在の忘却」に近く、現存在が本来の自己から目をそらしている状態。 * 本来的時間: 自己の死を意識し、限界性を自覚しながら、自分の可能性として未来を選びとる存在の在り方。 →「死への存在(Sein zum Tode)」を通じて自己に向き合う時間構造。 ■ 「死への存在」と時間 * ハイデッガーにとって「死」とは単なる終わりではなく、現存在の可能性の極限です。 * 自分が必ず死ぬということを真正面から引き受けることで、現存在は「本来的な自己」に近づける。 * そのとき時間は「有限の存在をどう生きるか」という実存的問いへと変化します。 ■ ハイデッガー時間論の特徴と意義 特徴 説明 - 時間=存在の構造 時間は単なる外的な流れではなく、「私たちがどう存在しているか」を形作る構造 主体的・実存的時間 客観的な時間よりも、「どう生きるか」に関わる主観的・実存的時間が重要 死の意識と未来 「未来から現在と過去を構成する」という時間の逆転的構造 |
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